工場やホテル・旅館などの施設、一般家庭でも、水回りや天井・壁などで黒いシミを目にされたことがあるでしょう。この黒いシミの正体はカビです。
高温多湿の気候に分類される日本では、基本的にどこにでも目にできるので決して珍しいものではありません。われわれの生活に密接に結びついています。
この記事では、そんなカビについてお話したいと思います。
カビとは
カビとは微生物の1種であり、真菌と呼ばれるグループの糸状菌と呼ばれます。カビは世界中に約3万種類生息しているとされ、現在確認されている微生物の約3割から4割はカビといわれるなど、人間の生活ので中で非常に身近な存在でもあります。日常生活でよく見かけるカビは大きく分けて黒カビや白カビ、黄カビや青カビ、赤カビや緑カビなどが挙げられます。
カビはキノコなどと同様の存在です。自身の分身を胞子を飛ばすことで増殖をしており、生物というよりも植物に近い存在でもあります。
室内でよく目にするものは青カビというもので、約0.005マイクロメートルの大きさです。これは人間や犬・ネコなどの動物が吸い込むとアレルギー反応を誘発することがあるのが特徴です。気管支喘息の最大の要因にもなるため、見つけたらすぐに洗浄をするのが望ましいものになります。
そのまま水で汚れを落とすだけでは、まだ壁や床に胞子が付着をしており、短期間で増殖を繰り返します。そのため、洗浄をする場合は塩素系の洗剤か漂白剤を使用しないといけません。
ただし、カビのなかには人間にとって良い役割を担っているものもたくさんあります。そのひとつがペニシリンという存在で、結核の予防接種に活用をされているものです。1880年に日本の医学博士が発見をしました。多くの方が学校教育で学ばれたことがある野口英雄博士が見つけたもので、それまでは不治の病であった結核の予防が実現するようになったわけです。
また食べ物にも活用をされており、納豆や日本酒を製造する際もカビを含ませて発酵を促します。これらは食べても決して害を及ぼさない発酵菌というものです。
カビは地球が誕生した当時から地上で存在をしており、最古の生命体とも呼ばれています。人間にとっては良い面と悪い面を持ち合わせた存在で、約1000種類以上に分類をして存在をしているものです。
そのうち200種類ほどが人間の生活に密接に関わっており、健康を促進したり食べ物として味わっているものになります。自宅内で見つけた際はまずは洗浄をおこなって、綺麗に処理をしましょう。カビは高温多湿を好む修正があるため、その環境を取り除けば増殖をすることはありません。常に換気をよくして水気を無くすことが大切です。
カビの種類
防カビ対策を行うには、カビの種類や特性を知っておく必要があります。
黒カビ
黒カビの特性としては、家の中全般に存在しているカビであり最も一般的なタイプだといわれています。代表的な黒カビとして挙げられるのが「クラドスポリウム」とよばれる名称のカビであり、空気中を浮遊していたりどこにでもある土壌菌です。
この黒カビは熱・アルコールに弱いことから数あるカビの種類の中でも比較的除菌しやすいタイプに分類されています。このタイプそのものに毒性はありませんが、エアコン内に繁殖しやすいことからこまめに掃除をせずに放置してしまうと、エアコン内で大量繁殖したカビが空気内に浮遊しやすくなり、気管支疾患やアレルギーの原因になる危険があるので定期的なお手入れが必要です。
白カビ
白カビは建材や食べ物など人間の生活しているいたるところに発生するふわふわとした特徴をもったカビを指します。
青カビや黄カビの仲間とされ、カマンベールチーズ製造に用いられるとして有名なカビもこのタイプですが、こちらも生物学的には青カビの1種となります。「醗酵ミネラルエキス」を作る家庭でも時々見られることが多い特徴を持っています。
黄カビ
黄カビは黄色からオレンジといった色をしているカビは、「カワキコウジカビ」という正式名称があります。他のカビとの生態と異なる特性を持っており、従来のカビは湿気のある場所を好むのに対して黄カビは乾燥している場所を好みます。
黄カビが多い場所としてはガラスやフィルム、刀剣といったものに発生しやすく、カメラのレンズに曇りを生じさせる原因の一つにこの黄カビが関係しています。
青カビ
青カビは黒カビと同じように人間の生活で最も馴染みのあるカビの一つであり、空気中に常に浮遊しているためパンやお餅、お菓子などに真っ先に生えるのはこのタイプだといわれています。このカビは特に毒性を持っていませんがこのカビが生えているということは、赤カビなどの有害なカビも同時に生えている可能性があるので食べ物などに生えていると確認できればそのまま廃棄する必要があります。
このカビは抗生物質の原料とされる「ペニシリン」が含まれており、薬以外にも様々な目的で活用されていることも特徴の一つで、ゴルゴンゾーラチーズやロックフォールチーズの発酵にも欠かせない存在であるなど、人間にとって関わりの深いカビの一つです。
赤カビ
赤カビは「フザリウム」と呼ばれる食物病原菌の一つであり、食物に生えることで腐敗や枯らしてしまう作用を持っています。人間の身近なところでは古くなったご飯やパンといった食べ物に多く発生する傾向にあり、人間や家畜に有毒となる「マイコトキシン」というカビ菌を産生させます。このカビ菌は非常に毒性が強いことから、食べ物に赤カビが生えていると判断した場合には食べずに廃棄することが基本です。
緑カビ
緑カビは青カビと非常に似通っており、特徴として緑色の粉っぽいカビが木材や畳の裏などに生えることがあります。これは「トリコデルマ」と呼ばれるカビであり、青カビとは全く異なるものです。緑カビは「ツチアオカビ」と呼ばれ、家の中でも湿気の多いところを好み主に木材に発生することで劣化と腐敗を引き起こします。そのため木造住宅に住んでいるという方は、梅雨時にこのカビが発生しやすくなり家の劣化を引き起こすので十分に注意する必要があります。
なぜ日本はカビが多いのか?
日本は高温多湿な気候を有する国で、年間の湿気が約45パーセントもあります。これは四方を海に囲まれているからであり、日本海流と黒潮という二つの海の流れも要因に挙げられます。
また2000年以降になると、地球温暖化現象の影響で真夏は40度近い気温にもなるようになりました。どこのご家庭でも必ず一台はエアコンを設置していることでしょう。このエアコンを使用したとき、カビ臭い空気を吸い込んだことはありませんか。それは湿気が高いことでエアコンの内部でカビが発生したのが原因です。
このようにカビは日本では非常に発生しやすい条件を整えており、特にホテル・旅館、工場、飲食店、病院等の人が集まる施設などでは定期的な防カビ対策が必要です。
カビの発生しやすい場所
エアコン・空調関連機器
病院から市役所・学校のほかに、家庭でもエアコンは存在します。ここでは常時、熱交換をおこなっているので湿気が溜まりやすいのが特徴になります。
外の空気を室内に流し入れるので、電源を入れると室内に気流が発生をします。カビはハウスダストの一種に数えられ、アレルギー反応を引き起こすものです。気管支ぜんそくやアトピーがそれになるため、なるべくカビを抑制しないといけません。取り除いて抑制をするには、どうしたらいいでしょうか。
水回り
トイレ・風呂場・洗面所、キッチンなどが該当箇所になります。黒い小さなシミを見つけた事がある方も多いでしょう。キッチンのシンクのフチであったり、トイレの便器のなかなどで多く繁殖をします。これら水回りも湿気が多く、室内であることから通気性も悪いので条件が整っているというわけです。さらに常時80パーセント以上の湿度となるため、多くの分量で発生をするのもポイントになります。
カビが原因でかかる病気
アレルギー性鼻炎
カビと一口に言っても様々な種類がありますが、アレルギー性鼻炎の原因となるのは主にスズカビとも呼ばれるアルテルナリアというカビです。多くのカビは胞子が小さいため吸い込むことで気管支に到達して喘息などの原因となりますが、アルテルナリアの胞子は大きいため鼻の中に留まりやすいという特徴があります。これにより、鼻水・鼻づまり・くしゃみといったアレルギー性鼻炎の症状が引き起こされます。
水虫
水虫の原因となるのはカビの一種である白癬菌(はくせんきん)で、この白癬菌が皮膚に感染することで強いかゆみや水ぶくれといった症状が引き起こされます。また、水虫と聞くと足に発症する病気というイメージを持っている方が多いかと思いますが、水虫の原因である白癬菌は全身に感染する可能性があります。最も感染部位は高温多湿な環境になりやすい足ですが、頭・手・顔・股間などに感染するケースもあるので注意が必要です。なお、足の水虫を放置すると白癬菌が爪にまで感染する爪白癬に発展する恐れがあります。爪白癬は他の水虫と比べて治療が難しく、長期にわたって治療を続ける必要があるのですが、放置すると爪がボロボロになるとともに、激しい痛みによって歩行困難に陥ることもあるので注意しましょう。
過敏性肺炎
過敏性肺炎とはアレルギー反応によって発症する肺炎で、様々なアレルゲン(アレルギーの原因物質)によって引き起こされますが、カビが原因のものは夏型過敏性肺炎と呼ばれています。夏型過敏性肺炎は、文字通り夏場に多く見られる肺炎で、トリコスポロンというカビが原因です。
発症すると咳・発熱・倦怠感といった症状が現れますが、症状が風邪と似ているので医療機関を受診しても風邪と間違えられることも少なくありません。なお、トリコスポロンは台所や浴室など様々な場所で繁殖しますが、エアコン内部で繁殖したトリコスポロンによって夏型過敏性肺炎を発症するケースもあるので注意しましょう。
気管支肺アスペルギルス症
気管支肺アスペルギルス症は、アスペルギルスというカビを吸い込むことで発症する病気です。アスペルギルスはコウジカビとも呼ばれるカビで、畳・じゅうたん・冷蔵庫・エアコンといった場所で多く繁殖しています。ほとんどの方は毎日吸入しているカビですが、免疫力が低下していたりアスペルギルスに対するアレルギーがあったりすると気管支肺アスペルギルス症の発症リスクが高まります。
また、症状としては咳・痰・息苦しさなど喘息と似た症状が現れるのが特徴です。発熱・食欲不振・倦怠感といった症状が現れる場合もありますが、放置すると肺の組織が破壊されて肺線維症や気管支拡張症などの病気につながる恐れがあります。肺線維症や気管支拡張症は難治性の病気で、治療を受けても肺の状態は元通りになる可能性は非常に低いので、気管支肺アスペルギルス症が疑われる場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
シックハウス症候群
シックハウス症候群とは、住宅の高気密化が進んだことによって増えた病気で、建材などから放出される化学物質によって汚染された空気によって引き起こされる健康被害の総称です。症状の種類や程度には個人差がありますが、代表的な症状としては目のチカチカ・鼻水・咳・喉の乾燥・吐き気・頭痛・めまい・湿疹などが挙げられます。
また、シックハウス症候群は建材などから放出される化学物質だけでなく、カビ・ダニ・細菌・花粉といった空気中に浮遊しているハウスダストが影響しているとも言われています。
クリプトコッカス症
クリプトコッカス症は、土壌中に広く存在しているクリプトコッカスというカビが原因で発症する病気です。土壌以外にも鳥のふんの中にも存在しており、肺から感染します。主な症状としては頭痛や発熱などが挙げられますが、初感染では無症状であるケースがほとんどです。ただし、免疫力が低下していると感染部位が拡大し、髄膜炎や脳炎症といった命にかかわるような重篤な病気につながる恐れがあるので注意が必要です。
このように、カビが原因で発症する病気には様々なものがありますが、中には重篤な状態に陥る可能性がある病気もあります。そのため、上記のような健康被害のリスクを少しでも軽減するためには、こまめな掃除や換気を意識するとともに、結露を発見したらすぐに拭き取るといった対策を行って、カビの発生を予防することが大切です。
カビの除去方法
身近な存在として発生しやすいカビですが、食べ物などに発生してしまった場合はそのまま廃棄することになりますが、家の中で起こった場合は定期的な掃除でカビを予防したり、綺麗にすることは十分に可能です。例えば水回りにカビが発生してたなら基本的にカビ取り剤や塩素系漂白剤を使用することで綺麗にすることが可能です。
カビが根深く生えている場合はカビ取り剤や塩素系漂白剤をかけた上から、ラップもしくはキッチンペーパーでカバーを行うとより浸透するので除去効果が高まります。ただしこれらの薬剤を使用する場合には必ず換気を徹底して行い、他の洗剤と混ぜないようにするなど安全面にも十分に気をつけましょう。
壁や畳など濡らしてはいけない場所のカビ取り方法なら、基本的にアルコール消毒スプレーまたは消毒用エタノールを用意してスプレーボトルに入れ替えましょう。畳や壁のカビが気になるところにスプレーを吹きかけ、その後歯ブラシを使用してカビのある部分を素材を傷めない程度で擦ることがポイントです。擦り洗いをして汚れが出たら広がらないように固く絞った雑巾で拭き取り、スプレーを再度吹きかけて最後に乾拭きを行えば完了です。
すぐできる!防カビ対策
カビが生えないようにすぐにできる防カビ対策をご紹介します。
湿度を下げる
ほとんどのカビは湿度が高い環境を好みます。
- 窓を開けて換気をする
- 室内干しを避ける
- 結露をふき取る
- 除湿器やエアコンのドライ機能を使う
湿度は60%以下にしてカビを予防しましょう。
こまめな掃除をする
カビにとって、ゴミ、ほこり、食べかすは繁殖するための栄養源になります。こまめな掃除で清潔な状態を保ちましょう。
換気をする
カビは高い温度、高い湿度を好みます。窓を開けて換気をすることで空気をこもらせないようにしましょう。
なぜ防カビ対策は必要なのか
健康被害の防止
カビの中には、人間に様々な健康的被害をもたらすものがあるため、そのようなものの発生はなるべく抑えこまなければいけません。例えば、アレルギーを引き起こすカビもありますし、肺で真菌感染を発症させるものもありますし、誤って食べてしまうことで、体調不良・食中毒を起こしたり発がん性リスクを高めてしまうものもあります。もっとも、すべてのカビがこのような健康被害を起こすというわけではありません。
カビは全部悪者だと思っている人も多いですが、カビの中には我々人間に良い影響を与えてくれるものもいますし、無害なものもいたりします。また摂取すると発がん性があるカビが存在するといっても、ほんの少量摂取しただけでいきなりがんになるというものでもないので、過度に恐れる必要もありません。それでも、常にカビが繁殖しているような部屋にいたり、カビの生えた食品などを摂取していると、健康被害に見舞われるリスクが増大するので、なるべくカビは生えないようにするべきです。
カビ対策を怠ると企業のイメージ損なう
食品関連企業においては、会社のブランド力を守るためにも防カビ対策の重要性が叫ばれています。食品製造企業が、万が一カビの生えているような商品を市場に流して、さらに食中毒を引き起こしたら、企業のブランド力・信頼性はガタ落ちになります。売上も激減してしまうかもしれませんし、最悪の場合、損害賠償事件にもなりかねません。
食品製造会社は防カビ対策の重要性をしっかりと認識し実施していかなければいけません。企業における防カビ対策では、従来は製品の一部のサンプルを抜き出して行う衛生管理手法が一般的でしたが、近年ではHACCPという手法が広がりつつあります。HACCPとは、すべての食品製造工程を分析し、とくに異物・細菌混入などが起きやすいリスクの高い工程を洗い出し、そこを重点的に監視して衛生管理を行っていくというものです。従来のサンプル検査よりも、衛生管理のクオリティが高まるということで導入する企業が増加しています。
防カビセナを使った防カビ施工がおすすめです
知識や経験のない初心者がいきなりできることではないですし、間違った方法だった場合は効果が薄くなったり、汚してしまったりなど時間と手間がかかってしまうことがあります。ですから、無理に行うよりは専門の施工業者を利用するのが安全で無難な選択と言えるでしょう。
専門の施工業者は経験豊富なスタッフが丁寧に作業してくれるため、最高の仕上がりに期待することができます。また、専門の施工業者に頼む方が無駄な心配をする必要がなく、作業が終わるのを待っているだけなので楽です。せっかく専門の施工業者を利用するなら一度だけにするよりは、定期的な防カビ施工を実施するのが効果的です。カビ対策施工は一度だけで終わらせるよりは数か月、半年など一定期間ごとに行うことによって、より清潔で衛生的な状態を維持することができます。